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タイヨウのうた




「久しぶりに会ったけど大二郎くんと話すの本当に楽しい!」


終電のない時刻。
ラブホテル。

見つめ合って話す彼女の笑顔は“タイヨウ”のように輝いていた。










この時までは。




























「大二郎くんご飯連れてってよ!」

彼女との再会は、俺が最近始めたSNSだった。
この子は学生時代のバイトの後輩。
すごく愛想がいい子で、誰からも好かれる性格。
初対面の女の子にすぐ毒舌になる悪いクセがある俺のことを、彼女は最初嫌っていた。


けれど、すぐに仲良くなり、バイト終わりや休みの日に何度も二人で遊びに行った。
いつしか俺は彼女に恋心を抱き、とある日の夜、意を決して告白した。




…彼女の返事は“ノー”だった。

「正直、大二郎くんは2番目なんよね‥」
彼女が1番好きだった男は、同じバイト先のスター。
話が面白く、いつも話題の中心にいる彼のことを、彼女が好きになるのは当然だった。



このころの俺は、意中の女の子に本気でアプローチしても1番になれない。
そんな悩みを抱えていた。

















「お待たせ。大人っぽくなったな。」

「ありがとう!大二郎くんもスーツすごい似合ってる!」

SNSでの久々のやりとりの後、待ちに待った彼女とのアポ。
俺は店選びから2件目のバー、そしてラブホテルまでの流れを完璧に準備していた。


今夜の目標はこの子とセックスすること。
付き合うことではない。
なぜなら今の俺はナンパ師だからだ。


セックスを狙いに行くことに葛藤がなかったわけではない。
負ければ失うリスクがある。
彼女との友人関係が終わってしまうかもしれない。


けれど、俺がこの世界に入った理由の一つに、“男としての魅力を上げたい”というのがある。
はじめは苦戦したが、前回、初めてストでゲットしたブログを書いてから、活動に良い流れが出来ていた。
その後もすぐにストやコンパで結果を出し、ネトナンも順調。
ナンパはまだまだ下手くそだが、アポを入れれば負けることはなくなっていた。

ここ2か月は学校が忙しくなってほとんど活動できなかったけれど、この半年強の成功体験が俺に確かな自信を生み出していた。



今の俺は、この子に振られた時より魅力的な男になっているのだろうか?


ナンパ師として、知り合いに手を出すのはタブーかもしれない。

けれど、勝てば大きなものが得られるはず。
これは、過去を乗り越える大きなチャンスだ。


イチかバチか、勝負してみよう。









「いらっしゃいませ。2名様ですか?」
「予約している桜庭です。」


さあ、ゲームの始まりだ。























「乾杯!」


いつも通り、トークは最初聞き役に徹する。
オーバーなリアクションやツッコミを織り交ぜて、話を引き出し、暗い話でも笑いながら話せる雰囲気を作ることを心がける。

お互いの近況報告やバイト仲間の話など、昔話に花が咲く。
久しぶりに会って最初はぎこちなかったが、1時間ほど経つと良い感じに和らいできた。


「そういや彼氏とは順調なん?遠距離って言ってたよな?」

「そうそう。遠距離になる前はうまくいっててんけど最近ちょっと悩みがあって‥」

「ホー。何があったん?」

「んーと、実はね‥」

「ははは!まじか!それは辛いな~笑」

「そう、しかもセックスのとき彼氏が○○でさ~、ってなに喋ってるんやろ私。こんな話男の人の前でしたことない笑」

「いやいやめっちゃおもろいよ!ほんでほんで?」

「なんかもー色々喋りたくなってきた。聞いてくれる?」

「おう。聞いたる聞いたる。今日は全部吐き出してスッキリしろよ。」

「他の人には絶対言わんといてね!」

「わかった!後でミクシィで拡散しとくわ!」

「もう!てかなんであえてミクシィやねん笑」




そこから彼女の恋愛の不満を聞き出し共感する。
いわゆる理解者トークを進める。
酒も入って彼女が饒舌になってきた。


この辺で攻めよう。






「久々に会ったし写真撮ってもらおっか。隣おいで」

「えー動くのめんどくさい」

「離れてたら店員さん後ろ下がらなあかんから他のお客さんに迷惑やん。ほら早く」

適当な理由付けで隣へ誘導する。

「すいませーん、写真撮ってもらえますか?」

「ちょ、なんで肩抱いてるん笑」

「せっかくやからカップルっぽく撮りたいやん」

「大二郎君ってそんなキャラやったっけ?笑」

「こっちの席の方が夜景キレイに見えるやろ?」

「あ、ほんまや~」






横並びに適したソファー席。
夜景を使った雰囲気づくり。
良い感じだ。
よし!ここから一気に畳みかけよう!































あれ?











おかしいな。
何もできない。








(おい大二郎!ここはハンドテストのタイミングだろ?いつもそうやってるじゃないか!)


頭の中でナンパ師の俺が叫ぶ。

確かにそうだ。そのためのルーティンだっていくつも身に着けた。


だけどできない。
なぜだ?



俺はここで完全に地蔵してしまった。








「やっぱり席戻るね。なんか横にいると変な感じ。」

彼女も何か察したのだろう。
俺が沈黙している間に彼女は向かいの席に戻っていった。


気まずい空気が流れる。


しくじってしまった。
でもまあいい。仕切り直しだ。


今までだって負けそうになったアポは何回もあった。
いや、楽勝だったことは一度もないかもしれない。
いつもいろんなドラマがあって逆転してきたんだ。
今回だってここから逆転してやる。






気持ちを切り替えてまた話を弾ませる。
空気はすぐ元に戻った。

そしてデザートを食べ、彼女がトイレに行っている間に会計を済ませた。




「明日休みやろ?俺もまだ時間あるし、近くにオシャレなバーあるからいこっか」

「いこいこ!」


予定通り2軒目のバーへ。





隣り合って座り、話す。
また少し気まずい雰囲気が襲ってくる。

ここで地蔵してはいけない。





「なあ、運命って信じてる?」

「信じてるよ。私付き合う人はいつも運命感じてるもん」

「こないだ雑誌で読んでんけど、運命の相手とは同じ手相があるらしいで。その線が二人ともあれば絶対結ばれるねんて」

「え~なにそれ?知りたい知りたい!」

彼女の手を取り、手相をなぞる。

「ほらこれ!うわーまじか、俺たち結ばれちゃったな」

「これ生命線やん!みんなあるわ!笑」

「あ、ばれた?でもキレイな手してるよな。家で洗い物とかしたことないやろ?」

「いつもしてますー」

「いい子やな」


手相ルーティンからそのまま手をつないでみる。
グダはなかった。











話は弾み、つないだ手が汗ばんできたころ、終電が近づく。
彼女は俺を見つめたまま、時間を気にする様子もない。
俺がこの活動で身に着けた、食いつきを上げるためのルーティントークは、このバーで彼女にも間違いなく刺さっていた。


「もうちょっと一緒に飲みたいよな?」

「うん。」




























「久しぶりに会ったけど大二郎くんと話すの本当に楽しい!」


終電のない時刻。
ラブホテル。

見つめ合って話す彼女の笑顔は“タイヨウ”のように輝いていた。


「カラオケ一緒に歌おうぜ!」

「いいね!」

ベッドに誘導し、雰囲気を作る。


昔から節操観念が強い彼女。
あの時だって、そんな軽い女だったら好きになっていなかった。
けど今は、そんな彼女が俺に寄り添っている。


さあ、勝利は目前だ。












いよいよセックスに持っていくタイミング、
俺は彼女に“ある言葉”をささやいた。



彼女にスイッチを入れるために。
そして、もしかしたら起きるかもしれないグダ予防のために。







それが逆効果になるとあの時知っていたら、俺は間違いなくそう言わなかっただろう…















「…なんでそんなこと言うん?」

彼女が俺から離れる。
空気が一気に凍り付いた。


「正直、それは一番言われたくないことやねん。」


ベッドから離れた椅子に座り、泣き始める彼女。

俺は必死になって弁明した。





「もう時間も遅いし帰るね。」





一度離れた心は簡単には戻らない。
俺の言葉は全く届かなかった。




「大二郎君のこと、嫌いになったわけじゃないよ。けど、今日こんなことになるとは思わんかった。」



そう言い残し、彼女は部屋を出て行った。


俺は追いかけることもできないまま、ただベッドの上で呆然としていた。


現実を受け入れられない。
あまりにも一瞬の出来事だった。














30分が経ち、1時間が経った。
時間が経つにつれて、悔しさが込み上げてくる。


勝利目前で敗北した現実が、俺に重くのしかかる。

勝負をしかけて負けたアポは、実に7か月ぶりだった。
しかもここはもうラブホテルだ。






あの時、あんなことを言わなければ…
ここで、もっとこういう風に振る舞っていたら…



反省点が次々と出てくる。


時を戻したい。
数時間前、彼女と待ち合わせをしていたあの時まで。





思わず腕時計を外し、針を何週も戻した。
もう一回このアポを最初からやり直せたら…









けれど、反省するのはそこではなかった。



1軒目のレストランで横並びになったとき、俺がハンドテストをできなかった理由。
それは、過去の自分の影がちらついたからだった。



俺は昔この子にアプローチをしていたとき、フレンドシップ戦略しか取っていなかった
もちろん手をつないだこともなければ、そういう雰囲気に持って行こうともしなかった。
彼女の記憶にある俺は、そういう男だ。



ベッドの上でも、あの雰囲気でもう言葉はいらなかったはずだ。



そう、俺は怖気づいてしまっていたのだ。


自分に自信がなかったから、まわりくどく攻めようとして最後に墓穴を掘ってしまっただけ。


結局俺は魅力的な男になんてなれていなかった。
あの場にいた俺は、PUAの仮面を被った只のAFC。





今日の負けは最初から”必然”だったんだ。








「たがが一敗やん。気にすることないよ。これからもっとナンパして、あの子より良い女抱いたらいいねん」
頭の中のナンパ師の俺が俺を慰めてくれる。

そんなこと言われなくてもわかってるよ。
けど、じゃあなぜこんなにも涙が出てくるのだろう?







失って初めて気が付く。
会っていない期間も、彼女が大きい存在だったことを。





















朝陽が差し、目が覚める。

シャワーを浴び、用意していた着替えのスーツを身にまとう。

ラブホテル特有の大きなテレビは、カラオケ画面で止まったままだ。

ケータイを見る。
彼女からの連絡は、ない。





ホテルを出て、朝の街に出た。

今日は雲一つない快晴だ。

晩夏を照らす太陽はいつもより眩しくて、思わず顔に手をかざす。

ふと目に入った自分の腕時計。











「さあ、今日も仕事や!学校の課題もちょうど終わったし、週末は久々にストに出て、クラブも行こうかな…あ、既セクからの連絡もそろそろ返しとこう。」











彼女と会うことはもうないだろう。
会おうとも思わない。
街へ出て、もっと良い女を見つければ良いだけだ。










こんなところで立ち止まってはいけない。












俺は針をいじって今の時間まで進め、会社へ向けて歩き出した。



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コメント

悔しいいいいい!悔しすぎます!!
読んでるおれが悔しくなってしまいました!!笑 切ないけど良い話でした!やはりリアルの相手には案件のように接するのって難しいですよね(´・_・`)僕もそういう体験があるのでめちゃくちゃ共感しました!!

負け記事の執筆ありがとう。

そういうことやったんやな。

ブログ書ける程のアポ負けできるのは素直に羨ましいわ。

何を言うて出て行かれたのかが気になるけどw

Re:

> 紀田さん

コメントありがとうございます!
いやーもうブログ書きながら何回ブルーな気持ちになったことかw
紀田さんも経験あるんですね!
今度語らいましょ^ ^

Re:

> 悪人さん

コメントありがとうございます!
本当は勝ち記事にしたかったんですけどね。。
盛大に負けました*\(^o^)/*
最後の言葉は…ナイショですw

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